かもな園のブログ

施設のブログ:かもな園

2017/02/24

中学生職場体験その②

中学生職場体験で、彼女達が企画したレクリエーションのフィナーレは表彰式だ。

ボーリングの上位3名を発表し、優勝者には手作りの賞状を用意していた。

『えぇ~わしが!?』 優勝者発表に驚いた表情のS様。賞状を受け取りに職員と一緒に前に出る。

賞状が手渡される瞬間、『ありがとう!ありがとう!』と喜びの表情の中、S様の目は潤んでいた。

実はこの後、ちょっとしたサプライズを用意している。

三日間の職場体験を頑張ったことを賞して、彼女達にも賞状を用意していたのだ。

彼女達への賞状授与はS様にも手伝って頂く。

 

このブログでよく登場しているS様が、いこいを利用しだしたのは7年前だ。

7年前と比べ ”もの忘れ” が進行している事は否定できない。

最近では、「読む」行為が苦手になっており、避けようとする傾向が見られる。

その時々で違いはあるものの、特に漢字を難解と感じている様に思える。

そんなS様は、おそらく賞状の文章を読むことは困難だと考えていたので

『三日間頑張りました。』と言ってもらい渡す段取りを想定していた。

勿論、S様が授与役を避けようとした場合、無理強いはしない。

 

「Sさん、若い子達に賞状を渡そうと思うんです。」

付き添い職員が声を掛ける。

『賞状?どないするんかね?』

独特の伊予弁イントネーションでS様が問いかける。

「皆さん三日間頑張ったので、この賞状を渡して頂きたいんです。」

『ほう!三日間も!』、『よっしゃ、よっしゃ』

「三日間頑張りましたと言って・・・」

付き添い職員が説明を始めた瞬間、

『どっから読むんかいね?ちゃんと読んだげにゃあかんだろ?』

「あっ・・ここからです。」

『えっと・・・あなたは・・・・・・・』

「中学校。職場体験です。」

職員が小声で伝える。

『中学校。職場体験で、この、三日間、とても・・・・』

「頑張っていました。」

『頑張っていました。その・・・・』

「頑張りを賞して」

『頑張りを賞して、ここに・・・・・』

「表彰します。」

『表彰します。』、『名前は?』

「○○さんです。」

『○○さん!よく頑張りました!』と言いながら賞状を反転させるS様、

背筋がシュッと伸びたその姿は、かつての公民館館長のS様に見えた。

おそらく、子ども会や婦人会等、様々な式典で賞状を授与してきたのだろう。

その姿が容易に想像できる。

 

これは推測だが、

賞状はきちんと読み上げて渡してあげなければならない。そのS様の強い意志は、

漢字が読みにくいので読みたくない。読めなかったら笑われないだろうか?と思う気持ちを

凌駕したのではないだろうか?

そして、この気持ちになったのは、ボーリングで優勝した事だけではなく

演奏から始まったこのレクリエーション全体の雰囲気だと断言できる。

一人の利用者様の気持ちを、マイナスからプラスに変換できた。

ここに介護のやりがいが集約されていると思う。

この積み重ねが介護そのものであり、理想としている形だ。

 

S様が賞状を読む気持ちになった事。その姿を見た職員のモチベーションが上がった事は

最後の反省会で彼女達と担当の先生にも聞いて頂いた。

今回の職場体験で介護の楽しい一面と同時に、やりがいの部分も感じてもらえればと思う。

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